時間の構造化理論

 人は一日の時間をどのように使っているのでしょう。
 人とかかわる時間を有意義するには、自分の時間をどのように使えばいいのでしょう。
 人は満足な「ストローク」を得られないと、何らかの形で社会的な状況(社交場など)を作り、そこで時間を構造化ないし、組織化しようとします。
 時間を構造化しようとする欲求は、刺激の欲求を満たすためのより複雑な様式であり、ストロークを得るための具体的な手段となります。
 つまり、人は自分の望む触れ合い(親密さ、気持ちよさ)を求めて、自分の日々の時間の使い方を分析します。それが時間の構造化理論です。
 それでは実際に人はどのように時間を処理しているのでしょう。
 時間の構造化は次の6つの方法があります。

『閉鎖(自閉)』  
 物理的にも心理的にも、他人からのストロークを放棄して自分の殻の中に閉じこもってしまう状態です。ストロークの欠如もある限度を超すと、身体はそこにいるが心はその置かれた状況から離れて、過去の出来事の追憶をしたり、空想したりして、心は「今、ここで」のものではなくなり、今ここに生きているといった実感がありません。

『儀式』     
 挨拶や形式的行事や習慣に従うストローク(相補的な言葉のやりとり)です。積極的な方法ではありませんが、人間関係を維持して行く上で、最低限のストロークともいえます。心理的な危険を感じないでストロークのやりとりができるかわりに、真の自分を出さなくてもいい分空しさを伴います。

『社交(雑談・気晴らし)』  
 雑談やうわさ話など、井戸端会議的なものです。無難な話題で時を過ごすことで、ストローク交換の心地よさはありますが、これだけでは本当の人間的な触れ合いは持てません。しかし、気晴らしとしての有効な時間の構造ともとれます。

『活動(仕事)』  
 仕事や目標を持っていて、何かを達成するために、人々の間で自発的な働きかけが行われます。かなり中身の濃いストロークのやりとりが期待できますが、一方、この時間の構造化には、いくつかの心理的危険(5月病や燃え尽き症候群など)が伴います。

『ゲーム』
 ゲームは、ストロークが欲しいという欲求から開始されます。ゲームのストロークは否定的ストロークですが、かなり中身の濃いものです。けれど、ゲームばかり繰り返していると、時間が非生産的に過ぎさり、一連のやりとりの後、決まって不愉快な感情を味わい、楽しい時間が失われます。

『親交(親密さ)』
 お互いに相手に信頼と共感が持てる状態です。相手に対する高い感心と、人格的なかかわり合いから作り出される、人と人との出会いです。親交は、交流分析が目指す理想的な時間の構造化の方法です。しかし、本当の自分と向かい合う関係なので傷つきやすい面も出てきますので、ときには社交(雑談・気晴らし)が必要になります。

 ストローク交換は、「閉鎖」「儀式」「社交」「活動」の順で、濃厚なものになって行きます。「閉鎖」は、自閉的でストローク交換のない状態、「親密」は恋人同士や家族団らんなど、密接で濃厚なストローク交換と言えます。
 しかし「ゲーム」に至っては、うまく続いていた「親密」な関係が一転しておかしくなって始まるもので、気まずい後味の悪い結末を迎えるにも関わらず、同じことを繰り返すという特徴があります。
 ゲームはある意味では、人間同士に触れ合いの満足度が高いものです。ゲームになりそうなときは、はやめに気が付いてストロークの出し方を変えるなどして、「親密」な関係を取り戻すようにしましょう。

 毎日を前向きで健やかに過ごすためには、自分の日々の時間の使い方を分析し、バランスよく使い分けることが大切といえます。




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